ニッカンネット.com
テーブルマナースポット
テーブルマナー>デザートのマナーと知識
* * *デザート * * *
デザートのマナーと知識20

    

デザートのマナーと知識S クレーム・ブリュレ
◆「君のデニムの青が褪(あ)せてゆくほど味わい増すように、長い旅路の果てに輝く何かが誰にでもあるさ」・・・竹内まりやの「人生の扉」の歌詞が素敵な曲の流れと共に心に染みます。時間の流れが早いなと感じ始めた五十路を過ぎ、一年が経ちました。

 過去は振り返らない・・・そんな言葉が好きです。しかし、裏腹に現実は、振り返り過ぎて、首に痛みを憶える程です。

 皿の上でプル〜ンとふるえるデザート。甘くて香ばしく、子供の頃初めて出会ったのが、このデザートなのかもしれません。正式名称は英語の(Pudding)プディングから来ています。日本に持込まれた時、英語の発音が「プリン」と聞こえたのでしょう。それ以来、日本ではプリンと言う名称で表現されています。

 もともとは、イギリスで作られた保存食から発展したデザートです。しかし、フレンチやイタリアンのレストランのデザートとしては身近過ぎて中々出ては来ません。この古くからのデザートを、さらに進化させたプディングがフレンチレストランで形を変えて出てきました。

 作者はフレンチの神様的存在のシェフ・ジョエル・ロブション氏です。1980年代の伝説的なレストラン・パリ「ジャマン」のシェフとして一躍脚光を浴び、風を切るスピードで名声を博しました。叙勲の数はきりが無いほどです。ことのほか日本に造詣が深く、日本料理からのヒントを得たヌーベル・キュィジーヌ(新感覚フレンチ料理)なども特化していると思います。恵比寿や、六本木にも氏のプロデュースしたレストランがあり、現在のフレンチ料理に多大な影響を与えている方です。

pudding そんな彼から生み出されたプディングの名称は「クレーム・ブリュレ」。スタンダードなフレンチのデザートとして、今や当たりまえに提供されています。「ブリュレ」は、焦(こ)げたと言う意味です。直訳すると、「焦げたクリーム」となります。表面にグラニュー糖をまぶし、バーナーで焼き上げキャラメル仕立てにし、香ばしさを演出します。ぱりぱり・サクサク感の表面を楽しんだ後、中の生クリームたっぷりのプリンを味わえます。斬新でも無いアイデアのように感じますが、既存するものを進化させて、新しいものとして提供し、まるで昔から在ったデザートのように感じさせる。そんな芸当は、凡人の発想や、感性ではなかなか出来ないものです。

 アバン・デセール(メイン・デザートに入る前のほんの一口デザート)として発展したデザートです。是非一度召し上がってみて下さい。常に新しい発想を求め、自分の殻や、歴史の呪縛を破る方がいる。そして、それを食せる環境にある事を感謝しなくてはいけないでしょう。気軽に手に入るプリンから、それを発展させたクレーム・ブリュレまで、プリンは奥が深いです。過去は振り返らない・・・そんな言葉が好きですが、振り返った過去から新しい物を生み出すこともあります。

「物はこれを活かす人に集まる」とよく言われますが、押して知るべし「ジョエル・ロブション」。トップを走る人には常に新しい歴史が生まれます。「クレーム・ブリュレ」の原型はイギリス。発展、進化させたのはフランス人のシェフ。とてもエレガントなデザートです。

   トップにもどる  


NIKKANNET に掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は日刊きりゅうに帰属します。

ニッカンネット.com