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肉料理のマナーと知識11

    

肉料理のマナーと知識J

キエフカツレツ

 子供の頃、映画好きの父に連れられて洋画を良く見せてもらったものです。華やかなアメリカ映画全盛ではなく、どちらかと言うと、切なく重い、リアリティーを追求したフランス、イタリア映画が当時の主流を占めていたと思います。字幕スーパーを見る力は無くとも、幼児期の感受性は鋭いものでした。断片的な映像美、それに合わせての音楽は、数十年経っても忘れないから不思議です。子供心に日本人には無いフランス人の仕草、イタリア人の洋服の着こなしを発見し、残像として記憶しています。洋の文化に潜在的な憧れを抱いたのは、こんな処から始まりました。

 時は移り、憧れはいつしかホテルマンとして形を変え、記憶を鮮明にして行きます。運良く、箱根プリンスホテルの開業準備室からホテルマンとしての第1歩を切る事になりました。

 ホテルは大きく別けて営業部門、宿泊部門、料飲部門、管理部門、施設部門、そして調理部門の6つの部門にて形成し、一つの組織としています。希望部門に配置してくれる総務課もなかなか無いものです。新入社員に選択の余地は無く、調理部門以外の配置や人事権は、勝手な都合による所が大きく、その後の個人の未来など考えないのが組織と判りました。料飲部レストランサービス課に配属された時には、はたして良いのか悪いのか?目的の地が見えない分、怖さも有りませんでした。それがいつしか確かな経過と供に信じる道へと開けてきました。かくして様々な料理人とソムリエに出会う事となり、多種多様な料理と飲物に魅了され、今日に到っています。

 箱根プリンスホテル・レストランさくらの料理長にある時こう言われました

・・『いいか蛭間 この料理をお客様にお出しする時は、必ず一言付け加えてくれ』・・・「ナイフは力強く入れないで、やさしくカットして下さい。中から肉汁と供にバターソースが勢いよく出て参ります。それがこの料理の特徴です」

そう説明の一言を添えてお出ししてくれと!

 26年前の言葉と料理がマバタキほどの一瞬の過去の様によみがえります。その料理の名前はキエフカツレツ
キエフカツレツ

・・・鶏の胸肉を薄く伸ばし、真ん中にハーブやパセリを入れたバターを巻き込んで、小麦粉、たまご、パン粉の順に衣を付け低温で揚げて行きます。ナイフを勢い良く料理に入れると高温な衣の中のバターソースと肉汁が突然飛び出してきます。勢いは、お皿から飛び出すほどです。ウクライナの首都キエフの名がそのまま料理名称になっている古典料理です。ウクライナは、欧州ではロシアに次いで大きな国とは言うものの日本人にはあまり馴染みの無い国かもしれません。ポーランド、ルーマニア、ロシアが隣接国です。キエフカツレツは、スタンダードな歴史有る料理ですが、最近レストランではなかなか目にする機会が無く、寂しい限りです。個人的に思い入れが強い、ただそれだけでなく、非常に美味しくミサイル型の形状も楽しい料理です。

もしこの料理と出会う機会がありましたら、ナイフとフォークを上手にやさしく使って召しあがって下さい。欧州の伝統料理、ウクライナの味をご賞味なさってはいかがでしょうか

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