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マラソン体験記
蛭間淳一

 

駒ヶ根高原
ホノルル かすみがうら 東京マラソン

 

中央アルプス駒ヶ根高原マラソンを走って   2006.9.24
長野県駒ヶ根市は「西に中央アルプス」「東に南アルプス」が映る自然の宝庫のような街です。日ごろの喧騒を離れ、自然とふれあい、そして走る。昔からの山岳マラソンです。その昔は「駒ケ岳山岳マラソン」と呼ばれ、昭和33年から「中央アルプス駒ケ岳登山マラソン」になり、現在の「中央アルプス駒ヶ根高原マラソン」になったそうです。そんな大会に初めて参加し、山のマラソンの魅力を体感しました。

 北は北海道から南は鹿児島まで、2850名のランナーが集まり、日頃の成果を競う大会でした。いわゆる街中を走るマンモス・ロードレースとは違い、山を駆け抜けるマラソンです。大会自体を楽しみ走ること、参加することに意義があると感じる人達の大会ではなく、日頃から走りこんでいるマニアックなランナーばかりと感じました。

 標高855メートルから一気に標高1005メートルまで駆け上るタフなコースです。わずか15キロのコースではあったのですが、登り下りの高低差250メートルの登山マラソンです。登りの時に使う筋肉と、下りの時に使う筋肉のバランスが難しい大会でした。

 駒ヶ根池の麓から10時に男子がスタートします。その後5分遅れて女子がスタートを切ります。非常に道幅の狭い道路がスタート地点です。前から男子19歳以下、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代と並び、スタート位置に着きます。「なんだこの配列は60歳代でも早いランナーはいくらでもいるじゃないか。29歳以下でも遅いランナーもいるじゃないか。単純に年齢で判断するなよ」などと感じながら位置に着きました(通常は自己判断のタイム別)。

 スタートの号砲と共に花火が打ち上げられ、感激と共にスタートを切る、そこまでは良かったのですがこの後が大変でした。道幅の狭いところからスタートし、道幅の広がるまでがおし合いへし合いです。4キロ地点までの多少道幅の広くなる地点まではまずこの順序でしか走れないのです。左端は崖です。抜くことも抜かされることもなくランナーが自然にばらけるのを待たなければなりません。

筆者 スタートしてから3キロ地点で女子スタートの号砲が聞こえてきました。5キロ地点ではトップの女子が男子選手を抜いて行きます。その時後方の選手から大きな声が聞こえてきました。「おーい女子トップが来るぞ皆左によけろ」

 一気に右端を凄い勢いで女子のトップがゼイゼイと大きな声をだし、凄いスピードで我々を抜いていきます。その後も同様に女子の早いランナーが通過する時は後方からの掛け声に従います。駒ヶ根を走るマナーを皆さん心得ていたのが印象的でした。天気は晴天、気温20度C、湿度65%の走るのには絶好なコンデションです。ゲストは2006年の名古屋国際女子マラソン優勝の弘山晴美選手が花を添え、憧れの選手に会えた満足感に浸ることもできました。前夜祭も盛大に盛り上がり、演出効果もなかなかのものです。

 さて、スタートしてからは究極の上りコースです、いきなり歯を食いしばるレースになります。山のマラソンならではの土路、中央には滑りのよさそうな”こけ”が生えています。道に転がる”山栗”をよけます。ロードレースでは沿道の声援に勇気を頂けるのですが、ここは山の中、声援はありません。個々の選手の息使いが静かな山の分だけ大きく聞こえてきます。やもすると、他の選手の息使いに惑わされる事があるので、自分のリズムを崩さずに注意を払いながら前に進みます。登りのキツイコースですから下りも急降下です。後ろの選手がもし転んで巻き込まれたら大怪我だな。。。などと想像しながら走ります。とにかく苦しい・・・ 「又、登り坂だ。越えなければ前に進めない。いったいいつまで登ればこの坂が終わるのか?」そんな事ばかり考えて走っていました。ラスト1キロの表示まで来るのに四苦八苦でした。1キロ先からの歓声が微かに聞こえてきました。ギアチェンジし、スピードを上げますが高低差がキツイ分だけ太ももの筋肉が異常に疲れています。さすがにゴール地点には応援の人達がいます。見えないエネルギーは不思議なものといつも感じますが、単純に声援を頂いた事でヤル気と勇気が出てくるのですから不思議なものです。呼吸はいっぱいいっぱいの状態なのに、声援という追い風を受けると足も応えます。

 今回も気持ちよくゴールを切ることができたのですが、ゴールが見えると同時に祭りの終演の寂しさが心に染みます。苦しんだ回数だけ楽しさの感激は想像以上です。こんなにキツイのに「又、来年ここに来よう!この山を走ろう!巨大なアルプスの麓を走ろう!」と心の中で二度、三度とうなづいていました。

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